(公社)日本技術士会東北本部青森県支部のホームページです 

Activity introduction

活動紹介

活動紹介

第1回継続研鑽研修会

日時:令和3年6月19日(土)
場所:青森市 ウエディングプラザ「アラスカ」
参加者:34名
講演テーマ
.東日本大震災以降の10年の活動を振り返って 講師:八戸工業大学工学部土木建築工学科 教授 阿波 稔氏
.東日本大震災から10年-地震工学の変化- 講師:弘前大学大学院理工学研究科 教授 片岡 俊一氏

 Ⅰ. 東日本大震災以降10年の活動を振り返って
講師:八戸工業大学工学部土木建築工学科 教授 阿波 稔氏


東日本大震災の特徴として、①東日本沿岸部を中心とした広域災害、②甚大な津波被害、③大きな余震の多数発生、④巨大な社会災害、⑤くしの歯作戦の実施を代表とする被災地支援、⑥膨大な災害廃棄物の発生、⑦国を挙げた復興があげられる。
 
震災直後に青森県三沢市から宮城県気仙沼市までの沿岸部の橋梁、防潮堤及び道路等の被害状況の調査を実施した。八戸港の北防波堤は、越流した津波による根固め基礎の洗堀によって堤体が倒壊する被害があったが、津波の高さが八戸地区沿岸で約10mに対し、八戸港内で約5mと津波の高さを低減する相当の効果が確認された。JR八戸線では八木川橋梁の橋台背面盛土の流出に起因する構造物の崩壊の被害があった。橋梁では、積層ゴム支承で支持された橋梁の被害は少なかったが、石巻市の天王橋では支承のアンカーボルトの抜け上がりや沓座の破損やトラス上横斜材の座屈・破断も確認された。田野畑村や宮古市田老の防潮堤では、越流による裏法面の浸食や防潮堤の破壊等が確認され、防御機能に限界があることが確認される等、過信しないことである。鉄筋コンクリート構造物では、塩分が耐久性に及ぼす影響があることから、仙台東部道路の種次橋橋脚や東北技術事務所の体験型土木構造物、模擬供試体及び建築構造物の資料庫の塩分調査を実施した。調査の結果、浸水高より低い部位では塩化物イオン濃度が高い傾向にあり、打継目において塩化物イオン濃度が高い傾向にある等、部位、浸水高さ、浸漬期間、欠陥及び雨水・洗浄の有無などの影響があることが確認されたが、洗浄処理による洗浄効果は回数に依存するものの、多数回実施しても効果は限定的である。
 
今後の良質なインフラ整備・維持のためには、地域の産官学連携による調査・研究、社会実装・人材育成、さらには目的意識や方向性の共有が不可欠であり、マニュアル・手引き類の整備と水平展開のための仕組みづくりが重要である。

阿波 稔氏講演状況

 Ⅱ. 東日本大震災から10年-地震工学の変化-
講師:弘前大学大学院理工学研究科 教授 片岡 俊一氏


青森県東方沖及び岩手県沖北部のプレート間巨大地震について、1968年十勝沖地震と同程度の地震は今世紀中には起こるので、青森県民はこの地震に備えるべきである。
 
過去には1960522日にチリ・南部でMw9.51964328日アメリカ・アラスカ州でMw9.220041226日インドネシア・スマトラ島沖でMw9.1の巨大地震が発生しているが、世界で起こることは日本でも起こる。
地震工学で新しくなったことでは、モーメントマグニチュード(Mw)の採用と海底での地震・津波計測(日本海溝海底地震津波観測網:S-net)が開始されたことである。モーメントマグニチュードは、地震の規模を表すマグニチュードの一つである。従来のマグニチュードは地震計の最大震幅から算出されたが、モーメントマグニチュードは、地震モーメントが分かる地震について、マグニチュードとの関係から求めたものである。2011年東北地方太平洋沖地震の際のマグニチュードの発表では、地震3分後に従来の手順により7.9と推定し速報値として発表され、313日に安定した遠地波形データも用いて9.0Mw)と発表された。当面は強い地震動に見舞われないと錯覚しているが、今年に入り213日に福島県沖の地震、47日に宮城県沖の地震、411日福島県浜通りの地震があり、いずれも大規模な余震である。
 
2011年東北地方太平洋沖地震の反省から、耐震対策は進歩しているが、耐震性が向上しても生活が不便になる場合がある。津波による被害、地盤に関連した震災は完全に防ぐことが難しいことから、地震災害を思い出すことが重要である。

片岡俊一氏講演状況

研修会受講状況