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Activity introduction

活動紹介

活動紹介

【SDGs】太陽光パネルのリユース・リサイクルに関する施設見学会

  時:2022年824日(水)13:0016:30
  所:三沢市国際交流教育センター(三沢市)、現地3か所(三沢市)
参加者:10
概要:
概要説明Ⅰ「三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合の取組」
講師:三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合代表理事 小坂仁志 氏
施設見学Ⅱ.おいらせ水素ステーション見学
施設見学Ⅲ.使用済み太陽光パネル診断システム見学(㈱小坂工務店第三倉庫)
施設見学Ⅳ.使用済み太陽光パネルリサイクルライン見学、ガラスリサイクルライン見学(㈲ループ戸崎営業所)

三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合の取組


 三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合は、東日本大震災以降、再生可能エネルギーへのシフトが大きく加速したことや、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が平成24年7月に始まったことなどから、三沢市に集積が見込まれるソーラーシステムのメンテナンス業務を共同受注するために平成24年8月に設立されました。
 
その後、銀行からの融資や東日本大震災の被災地向け補助金を受け、メガソーラーの建設・売電事業に着手するとともに、メガソーラ―の売電収入で得られた利益や国の補助金を活用して太陽光パネルのリユース(再使用)・リサイクル(再利用)事業、水素ステーション事業等の新規事業を立ち上げ、新エネルギー産業の地域の発展や雇用創出に努めています。

 このように組合は、メガソーラーの整備・維持管理、新規事業など様々な取組を行っていますが、取組を進める際には、行政、企業、銀行等と連携しながら進めています。まず銀行や国との粘り強い交渉の上、融資や補助金を受けることに成功し、メガソーラーを建設しました。また、県の支援センターから紹介を受けた東芝環境ソリューション㈱との共同開発の合意を取り付け、同社の太陽光パネルのリユース・リサイクルに関する設備を順次導入しました。さらに、リユースした太陽光パネルで発電した電気を用いて水素を製造する取組を、本田技研工業㈱と岩谷産業㈱とで共同開発することにも成功しました。

メガソーラーを建設する際には、予め人手による除雪や草刈り等の保守作業を見込んで、パネルの設置角を積雪地域で採用されている角度よりも小さくし、単位面積当たりの設置枚数を増やしています。これにより保守作業の人員が増えることとなりますが、社会福祉法人と契約して障害者を雇用するなどして地域の雇用に貢献するとともに、寒冷地でのソーラーシステムのメンテナンス技術の確立に努めています。

 このように、太陽光発電の持続可能な発展を中心とした再生可能エネルギーに関する取組は、SDGsの取組として捉えることができ、組合では「7.エネルギーはみんなに、そしてクリーンに」「12.つくる責任、使う責任」「8.働きがいも経済成長も」「13.気候変動に具体的な対策を」等の目標が該当するとしています。中でも12番の目標にある「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」を中心に捉え、太陽光発電による天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用、太陽光パネル等のリユース及びリサイクル事業を通じた資源効率の改善を中心に取り組んでいます。

概要説明の様子
講師/小坂代表理事

おいらせ水素ステーション


 水素ステーションは、本田技研工業㈱と岩谷産業㈱とで共同開発した「スマート水素ステーション」を設置したものですが、水の電気分解に必要な電力は使用済み太陽光パネルで得られた電力を使用しています。また、寒冷地のため、水の凍結を防ぐために地中熱を利用したシステムを積水化学北海道㈱等と共同開発し、得られた水素は燃料電池車(FCV)に供給しています。

水素ステーション
見学の様子
使用済み太陽光パネルと地中熱システム
燃料電池車見学

太陽光パネルモジュール診断システム


  同システムは、使用済みの太陽光パネルに太陽光と同じ人工光を当て発電性能を調査するとともに、耐電圧性能、絶縁性能、損傷具合等を総合評価して、リユース可能かどうかを判別しています。リユース可能な製品は中古パネルとして販売し、リユース出来ないものはリサイクルします。見学時には、実際に使用済み太陽光パネルの診断を実施してもらいました。これらのパネルの多くはリユース可能とのことです。

太陽光モジュール診断システム
見学の様子

太陽光パネルのリサイクル


 破損等でリユースできない太陽光パネルは、発電素子部が結晶系のものは、モジュール分離装置を使用して板ガラスと電池粉とに分離させ、板ガラスは販売し、電池粉は資源販売可能となります。発電素子部が化合物系のものは、モジュール破砕装置にて破砕し、ガラス成分のみを分離した上で、発泡材と混ぜ合わせて焼成し、ガラス発泡軽量資材として製品化します。この製品は「スーパーソル」という人工軽石で、盛土材、緑化資材、農業資材、水質浄化資材等に利用されています。現在、この製品はJIS化され、市町村等からの引き合いが多くなっているとのことです。このように当該施設を使用することで太陽光パネルのリサイクルが可能となっています。

モジュール分離装置(PVスクラッチャー)
見学の様子
モジュール破砕装置(PVクラッシャー)
ガラス粉砕片回収装置(ガラス分離ライン)

おわりに


 新型コロナウイルスのオミクロン株が流行し、見学会の開催が危ぶまれましたが、少人数の参加者により、SDGsの先進的な取組を行っている企業の施設を無事見学することができました。
 
三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合は、寒冷地における太陽光発電システムの持続的な発展に向けた先進的な取組を、国、自治体、企業、銀行の協力を得ながら進めており感心させられるとともに、青森県内の企業でこのような取組を実践していることに誇りを感じました。そして、この持続可能な発展に向けた取組こそが、まさにSDGsの取組そのものであり、今回これらの施設を見学したことは、SDGsの取組を今後検討する皆様にとって大変参考になるものだと思っています。
 
ご協力をいただいた三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合の皆様に改めて感謝を申し上げます。 


記事執筆/青森県支部 CPD委員 鈴木 将文